漢方薬は「苦い」「飲みづらい」という印象を持たれがちです。「良薬口に苦し」という言葉がピッタリ、と感じる方も多いかもしれません。
しかし、実際は「良薬口に苦し」ではなく「良薬口に『甘し』」というパターンもあり、一概にはいえないほど複雑なのです。
今回は漢方薬の「苦み」についての詳細や、漢方薬における「味」についての考え方などについて詳しくご紹介いたします。
一体いつから?漢方薬の「良薬口に苦し」というイメージとその理由
「良薬口に苦し」という言葉は、古くは『韓非子』や『史記』にも出てくるもので非常に古い教訓です。『韓非子』も『史記』も紀元前に書かれたものですから、2000年以上前の中国では、すでに「薬は苦いものである」というイメージがあったことがわかります。
当時の中国の薬は全て漢方薬でした。そのため「漢方薬は苦いもの」というイメージが定着したものだと想定できます。
この苦さや飲みづらさから、漢方薬を敬遠されている方もまだ多くいらっしゃいます。しかし、「苦い」のにはそれなりの理由があるのです。その理由について、以下からご紹介いたします。
意味のある「苦み」を知ろう!漢方の「苦み」の効能について
漢方の「苦み」にはきちんとした意味や理由があります。ここでは、漢方の「苦み」における考え方や効能について詳しくご紹介いたします。
漢方の「苦み」における考え方は?
漢方では「五味(ごみ)」と呼ばれる5つの味があります。苦み、甘み、酸味、塩辛さ、辛み(ピリ辛含む)に分類され、それぞれが心臓、脾臓、肝臓、腎臓、肺の「五臓」に対応しています。これらには特別な効能があり、漢方の処方において重要な要素であると考えられています。
このような考え方の中で「苦」は「寒」と漢方では判断します。この「寒」には、主に2つの意味が含まれています。
※冷やす(炎症を抑える)
※鎮静させる(興奮を抑制する)
例えば、二日酔いの時に飲む胃薬は大抵苦いものです。これは、漢方の概念で考えると、お酒を飲むと身体が熱くなり(熱を生み出す作用がある)、お酒によって「胃が熱を持っている状態」となります。
この熱(=胃の炎症)を「苦み」を使って冷やす、という目的で苦い漢方薬が用いられる、という流れになります。
無意識に使っている?!身近にある「苦み」の意味
漢方における「苦み」の考え方は、上記でご紹介した作用の他にも、精神的にオーバーヒートした時に使われます。
代表的なものが「コーヒー」です。会議や仕事で煮詰まった時、「コーヒーブレイク」として、休憩を取りながらコーヒーを飲む方が多くいらっしゃいます。
私自身はコーヒーを飲むと胃もたれを起こしてしまうので緑茶で代用していますが、効能は同じです。
漢方的に見ると「苦みでオーバーヒートした脳を鎮静させ落ち着かせようとしている」となります。
このように、苦みもその方の体質や状況によって必要なことがあります。その体質や状況によって、自然に「苦み」を取り入れていることが多くあるといえるでしょう。
身体が必要としていれば、「苦み」も案外嫌ではなくなることがあります。これは漢方治療でも同様で、苦い漢方薬が本当に必要な時は、苦いなりに飲めるものです。
これはお子さんでも同じで、オブラートに包まなくても飲めるケースもあります。ただし、普通の食事の経験が少ない、お菓子を食べていることが多いお子さんだと、苦くて飲めないこともあります。
「甘い漢方薬」でも、体質に合わなければ飲めない
ご存じない方も多いかもしれませんが、「甘い」漢方薬も存在します。
お菓子ではありませんので、びっくりする程の甘さではありませんが、飲まれた方は皆さん「甘い」とおっしゃいます。
苦い漢方薬が苦手な分、甘い漢方薬なら多くの患者様が飲みやすいかというと、そうではありません。その漢方薬が「患者様に合っているかどうか」が最も重要なのです。
私が漢方薬剤師になってまだ十分な経験を積んでいなかった頃、不妊治療に「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」と呼ばれる漢方薬を患者様に処方したことがありました。
婦宝当帰膠に含まれる「当帰(とうき)」という生薬は、造血作用や女性ホルモン調節作用、卵巣や子宮内膜の状態を改善する作用など、妊娠のサポートとなる作用があります。
しかし、砂糖の入った婦宝当帰膠は「甘ったるくて飲めない」といわれてしまいました。後々考えれば、この漢方薬がその患者様の「証(体質)」に合っていないため、「甘ったるい」と感じたのでしょう。
漢方薬は「苦さ」「甘さ」ではなく、「合っているかどうか」が重要
私の経験からいえば、漢方薬の「味」というのは普通の人がまずく感じるような味でも、漢方薬がその方に合っていれば「まずいなりに飲める」ことが多く、味だけで全てを決めることはありません。
何よりも、患者様の体質や症状に適している、漢方薬を飲むことで症状が改善することが最も重要なポイントです。
しっかりと「証」を調べ、適した漢方薬を処方することにより「飲める」「効く」漢方薬となります。
当薬局では患者様お一人お一人に丁寧なカウンセリングを行い、患者様に最適な漢方薬を処方させていただきます。
漢方薬のことでご不明な点、漢方薬で症状を改善したいとお考えの際は、ぜひ漢方薬局ハーブスにご相談下さいませ。
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