左手がうまく挙がらないという患者さんが来られました。
この方、実は奥様がうちの漢方相談に来られていて、調子が良くなられたのを見て自分も治療を受けたいということで来られたのです。
「この左手が上がらなくなったのはいつからですか?」とお伺いすると、これはずいぶん前からのようです。
病院にも行かれたみたいなのですが、病院では治療難しいと言われたため来られたそうなのです。
そこで、左手を実際にあげてもらうことにしました。
そうすると、重症の五十肩の患者さんよりも挙がらないのです。
正直、手の高さが肩の高さまで挙がっていない感じです。
これは、五十肩でもここまでひどくないと思いました。
この方の年齢(80代)から考えると、肩の靭帯が切れているのではないか?と思いました。
そこで、病院でどういう診断でしたかとお伺いすると、2つ行った病院のうち1つが靭帯が切れているから治すのは無理だといっていたそうです。
正直、私も同じような感想を持ちました。
そこで、やはり漢方でもこれは難しいかもしれませんというお話をしました。
ところが、この患者さんは、「少しでもいいから今よりも肩が上がるようになりたい」という風に強く言われるので、根負けして治療してみることにしたのたのです。
そこで、もう一度、左手をあげてもらって身体の動きを分析してみることにしました。
そうすると、左手をあげようとする時に、全身の筋肉を使ってあげようとしていることに気がつきました。
特に、肩周辺の筋肉だけでなく、左の肋骨周辺や腰の筋肉あたりまでも使って無理してなんとかあげようとしているのです。
この動作を見て、もし、左手を挙げるために、このように常に頑張っていると、筋肉は慢性的な筋肉疲労をしているだろうと思いました。
この蓄積した筋肉疲労によって、手の挙上がさらに制限されている可能性があるだろうと考えたのです。
そこで、筋肉の使いすぎによる筋肉痛に用いる漢方薬で様子をみることにしました。
そして、このお薬をお出しして、様子をみていたたくことにしました。
そして1週間後に来ていただいたところ・・・
左手が、今までよりも9cm高く挙上できるようになっていたのです。(最初の手の挙がる高さは前回の漢方相談の時にあらかじめ測定していたのです)
そして、患者さんと、奥さんが言うには、右肩の痛みも減ったと言うのです。
それに関しては、プラシーボではないか?と思いました。
どちらにしろ、まだ右肩の痛みはまだ完全に無くなってはいないので、今回は炎症を取り除く漢方薬を出してみることにしました。
このお薬を、1週間服用していただくことにしました。
そして、1週間後に来られた際に、調子をお伺いすると・・・また、再び右肩の痛みが悪化しているそうなのです。
あれ?
これもちょっと予定外でした。
しかし、漢方薬を変更してから確実に、痛み止めの湿布を貼る回数と量が増えたそうなのです。
そこで、右肩の痛みの部分に、再度、筋肉の使いすぎによる筋肉痛に用いる漢方薬が効くかどうかチェックしてみると・・・やっぱり効かない気がするのです。
効くのは左肩から左脇の筋肉周辺です。
それでも、患者さんとその奥さんがわざわざ嘘をついてるとも思えないので、もう1回だけこの薬で様子を見てみることにしました。
そして一週間後に来られた際に再度様子を伺いすると・・・
やはり右肩の痛みは楽になっていて、湿布を貼る回数も減っているそうです。
実際右肩の痛みのレベルをチェックすると確かに前回より改善しているのです。
そして左手の手の上がり具合をチェックすると、一番最初に来られた時よりも20センチ手が高く上がるようになっているのです。
これらのことも加味して考えると、恐らくですが、なぜ右肩の痛みが軽減するのかと言うと、右肩の痛みというのが、そもそも使い過ぎによるものなのだと思います。
左肩が肩よりも上に上がらないということは、本来左肩で出来ることができなくなるため、右肩を必要以上に使わないといけなくなります。
この漢方薬は左肩周辺の筋肉のこわばりを取って左肩の動きが改善します。
左肩の動きが改善することで、左肩でしなければならないことが左肩で出来るようになります。
そうすると結果として右肩を酷使することがなくなります。
それによって痛みが軽減しているのだと思います。
今までいろいろな治療してきましたが、このようなケースは初めてなので少々驚きましたが、とても勉強になりました。
ちなみにこの患者さんは、肩の痛みが軽減したので、現在は他の痛みの箇所を治療している最中です。