患者さんが来られました。この方、患者さんからの紹介で、乳がん手術後の体調維持のためのご相談で来られていたことがあるのですが、その件が一区切りついてからも、時々心配事があるとご相談に来られるのです。
今回のご相談は、体調が不調で病院で検査を受けたら甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の診断が出て、病院からメルカゾールというお薬を出されたそうですが、この病気の事も、お薬の事も心配でご相談に来られたのです。
そこで、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)のことについて一般的なお話とメルカゾールについてのお話をしました。
病気に対する捉え方は人それぞれだと思いますが、一般的に言えば、大病ではないということ、西洋薬で十分コントロールできること、かなりの方はメルカゾールを継続的に服用して、数値が落ち着いてきたなら徐々に減薬していき、最終的には薬を飲まなくても良くなることの多い病気であることなどです。
それらの話をして、必ずしも漢方治療は必要ないという悲しもしたのですが、ご本人が早く良くなりたいということと、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)を再発しないように体質改善をしたいということだったので、漢方治療をすることになりました。
そこで改めて、この患者さんの体質を知るための東洋医学的な問診やその他の東洋医学的なチェックを行い、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に用いられる漢方薬の中からこの患者さんに合うと思われる漢方薬を選んで服用していただくことにしました。
そして大体2~3週間間隔でご相談に来られました。
そして、病院で検査を受けられた時にはその結果をチェックして東洋医学的なチェックを行い、漢方薬が合っているかをチェックし、また漢方薬をお出しするというながれでした。
メルカゾールの働きは甲状腺での甲状腺ホルモンの合成に必要な酵素の働きを阻害することで甲状腺ホルモンの合成を抑制するのです。
つまり、通常メルカゾールを服用するだけで甲状腺ホルモンの数値は減ってゆくのです。
そこに患者さんの体質に合う漢方薬を服用するとその数値が下がるスピードが上がる場合が多いのです。
あと、もう一つはメルカゾールを服用すれば甲状腺ホルモンであるFT3やFT4の値は下がるのですが、この甲状腺ホルモンを中枢でコントロールしているTSH(甲状腺刺激ホルモン)の値はなかなか動かない事が多いのですが、漢方薬を使うと、この値も動きやすくなるのです。
病院ではこのTSH(甲状腺刺激ホルモン)の値を見て治療がうまくいっているか?やメルカゾールの減薬のタイミングを判断しているのでこのTSH(甲状腺刺激ホルモン)の値が大事なのです。
そのため治療経過としては
最初 FT3やFT4の値高値、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の値測定不能(低すぎる)
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FT3とFT4の値が低下してくる(正常値よりは高い)
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FT3とFT4のどちらかの値が正常値になる
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FT3とFT4の両方の値が正常値になる
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TSH(甲状腺刺激ホルモン)の値が上昇
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甲状腺刺激ホルモンの値が徐々に低下
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甲状腺刺激ホルモンの値が正常値になる
という経過をたどります。
そして今回のこれが2024年12月一番最初の値です。
つぎがこれです。まだ正常値ではないですがFT3とFT4の値が低下してきています(正常値よりは高い)
その次がこれです。まだ正常値ではないですがさらにFT3とFT4の値が低下してきています(正常値よりは高い)
次の値がこれです。まだ正常値ではないですがFT3とFT4の値が正常値になりました。でもTSHは測定不能
その次がこれ。FT3とFT4の値は正常値になり、TSH(甲状腺刺激ホルモン)も正常値ではないですが、測定不能ではなくなっています。
この間この患者さんが病院を受診した際、通常はFT3とFT4の値が正常値になっても、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の値はなかなか測定不能から変化しない事が多いそうですが、非常に順調にいっているということでした。このような感じで治療は順調にいっています。
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