「妊娠しやすい食生活」という書籍をご存知でしょうか?
この本はハーバード大学公衆衛生大学院ジョージ E チャバロ准教授 とハーバードメディカルスクールのウォルター c ウィレット教授が、1989年より妊娠を希望している18555名の女性看護師を対象に、8年間にわたって食生活が妊娠にどのように影響するか?を看護師健康調査という形で行った結果をまとめたものです。
この書籍は2013年に日本で出版されています。
この書籍の中にはこの調査によって妊娠と食生活にある種の相関性があることがわかり、妊娠しやすい食事というものもある程度、指し示されています。
そしてこの中で、子宮内膜症と食事についても触れられています。
この本は、栄養素という切り口で食事(食生活)と不妊症やその原因の病気(ex子宮内膜症)の際の食事の摂り方について説明している点がとてもユニークです。
ただし、話を進める前に1つ注意点があります。
それは基本的に日本人とアメリカ人では食文化(食生活)異なるということです。
当たり前ですが、この本に書かれている内容はアメリカ人の食生活をベースに書かれています。
そのため全ての内容が日本人に当てはまるとは限らないのです。
そこで、私は、実際にここに書かれている内容に関して、日本の統計調査をチェックして、日本人の食生活とアメリカ人の食生活の違いについて改めて比較しました。
また、私の薬局に来られている患者さんに対して、ここで書かれている内容が当てはまるかどうかチェックをしています。
そのチェックした内容をもとにお話ししたいと思います。
そのポイントは以下の一覧としてまとめました。
もっと詳しく知りたい方は一覧以降にもう少し詳しく書いたのでそちらを読んでみてください。
書籍の中の子宮内膜症に関わる食事のポイントと独自の検証結果
妊娠しやすい食生活の中の、子宮内膜症に関する部分のより詳しい説明
この本は炭水化物、脂質、タンパク質の三大栄養素の摂取と妊娠について整理して書かれています。
炭水化物と子宮内膜症と妊娠
それではまず炭水化物について説明します。
この本の中に書かれている炭水化物についてのポイントは精製された炭水化物を摂らないということです。
具体的には精製された小麦やコーンフレークなどとらないということが書かれています。
精製された小麦というのは白色の小麦です。
私たちが普段食べているパンやうどんなども通常は精製された小麦を使っています。
ここでこの本がお勧めしているのは全粒粉という茶色っぽい小麦です。
自然派のパン屋さんなどではこういったものが扱われています。
今、この記事を読まれている方の中にもこういったものを好んで食べられてる方もおられると思います。
そこで実際、私の薬局に来られている子宮内膜症の患者さんで精製された小麦と全粒粉が子宮内膜症でどのように影響するのか?独自のチェック法を用いて調べてみました。
その結果、全粒粉は確かに〇で、精製した小麦は確かに×でした。
ではどうして精製した小麦は 不妊症に良くないのでしょう?
この本には簡単な説明と詳しい説明の二つ書かれているのですが、ここでは簡単な説明をしておきます。
精製した 炭水化物は 全粒粉に比べると血糖値が上がりやすいのです。
血糖値が急激に上がるとインスリンという血糖値を下げるホルモンが大量に出てしまいます。
このインスリンが高濃度に高い状態が続くと 性ホルモンのバランスが崩れてしまい、その結果、排卵しにくくなったり、排卵しなくなったりして妊娠する力を低下させてしまうのです。(チョコレート嚢胞(子宮内膜症の一種)も排卵障害を起こしやすい病気です)
脂質と子宮内膜症と妊娠
では次に脂質についてお話しします。
脂質の中で最も重要なことはトランス脂肪酸をとらないということです。
この本の中でトランス脂肪酸を多くとる女性は子宮内膜症を発症しやすくなり、それによって不妊症のリスクが高くなると書かれています。
それではトランス脂肪酸とはどの様なものなののでしょう?
トランス脂肪酸の代表的なものはマーガリン、ファットスプレッド 、ショートニングの三つです。
トランス脂肪酸とは、植物性の油を固形or半固形の安定した状態に加工する際に、化学変化によって生じる副産物です。
つまり、これらは乳製品ではないのです。
そして、この油脂は、排卵障害を引き起こし、妊娠の障害になります。
マーガリンはご存知のように植物性油脂を原料としてバター似せて作ったものです。
ファットスプレッドはマーガリンの一種で植物油脂の割合が80%未満のものを言います。
そしてマーガリンよりも水分が多く、そのぶんだけ柔らかく塗りやすいので日本で実際にマーガリンとして販売されているものはファットスプレッドのことが多いのです。
ショートニングとはマーガリンと同様に植物油を原料とした常温でクリーム状の食用油脂です。
主にはパンや焼き菓子作る際にバターやラードの代わりに使われるものです。
この油をラードの代わりに揚げ油として使うと衣がパリッとして、焼き菓子に使用するとさっくりと焼きあがると言われています。
ショートニングの言葉の由来のショート(short)にはさっくりやパリッとするという食感を表すような意味が含まれています。
では、このトランス脂肪酸一日に摂取していい量というのはどれくらいなのでしょう?
WHO(世界保健機構)ではトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とするように勧告しています。
これを日本人に当てはめると一人1日あたり約2g未満ということになります。
ただし、この妊娠しやすい食生活の本の中では著者の方は子宮内膜症の方に関しては特にトランス脂肪酸は全く摂取しないで済むのであればその方が良いということを言われています。
では実際に具体的な食品としてどんなものにどのくらい含まれているのでしょう?
普段食べられているもので比較的含量の多いものを1日分の目安も合わせて表にしてみました。
平成27年国民健康・栄養調査結果の概要(厚生省)より一部抜粋
たんぱく質と子宮内膜症と妊娠
それでは次に、タンパク質についてお話しします。
タンパク質に関しては、量よりも質の方が重要なようです。
ここに書かれているポイントは次のようなことです。
- 炭水化物を減らして動物性タンパク質を増やすと排卵性不妊のリスクが増加
- 25gの動物性タンパク質を摂り、代わりに25gの炭水化物を減らすと、不妊になるリスクが20%増加する。
- 炭水化物を減らして、植物性タンパク質を増やすと、排卵性不妊のリスクが減少
- 25gの植物性タンパク質を摂り、25gの炭水化物を減らすと、排卵性不妊のリスクが43%減少・動物性タンパク質の代わり植物性タンパク質を摂るとより効果的2
- 5gの動物性タンパク質やめ、代わりに植物性タンパク質を25g食べると不妊のリスクが50%減少します。
ここに書かれている内容に関しては正直あまり日本人には関係ないかもしれません。
というのもアメリカ人の 一人当たりの肉類の摂取量と豆類の摂取量というのは日本人とはずいぶん異なっているのです。
アメリカ人は動物性タンパク質に比べ植物性タンパク質は1/20以下しか摂取していないのです。
アメリカ人の二十歳以上の女性の方は1日あたりおよそ1日あたり68gのタンパク質を摂取しています。
そのうち豆類などの植物性タンパク質は1/20以下ですから3g程度ということになります。
後の約65gは動物性タンパク質を摂取しているわけです。
一方、日本人は二十歳から29歳の女性の場合、1日のタンパクの摂取量が63.2gなのに対し、そのうち動物性タンパク質は35.3gです。
つまり半分弱は植物性タンパク質を摂取しているということになります。
三十歳から39歳の方は1日のタンパク質の摂取量は平均60.4gと若干少ないです。
けれども、そのうちの動物性たんぱく質の摂取量は32.3gとこれも若干少なめです。
結局比率としては半分弱が植物性たんぱく質の摂取ということになります。
つまりアメリカ人の方というのは動物性たんぱく質の摂取が過剰であり、それが原因で、排卵障害不妊になっている可能性が高いのです。
そして65gの動物性たんぱく質のうち25gを植物性たんぱく質に変えてもまだ動物性たんぱく質は40g摂取しており、植物性たんぱく質は28g(約4割)に過ぎないのです。
一方、日本人は、もともと5割近く植物性タンパク質を摂っています。
そのため、たんぱく質を植物性に変える必要がないのです。
むしろ、これ以上植物性のタンパク質を増やしていくと植物性たんぱく質と動物性タンパク質のバランスを逆に欠いてしまう可能性があります。(もしさらに25g植物性たんぱく質に変えると全体の9割が植物性たんぱく質になってしまう➡それはやり過ぎだと思います)
まとめ
ここではハーバード大学の調査結果に基づいた妊娠しやすい食生活という本の中に書かれている、子宮内膜症の方に良い食生活について、漢方薬局ハーブスで独自の検証やチェックを行い、その結果も合わせてお話ししてきました。
ここで書いた中で重要な点を改めて整理してみると、炭水化物は食物繊維やミネラルを含んだ精製していない小麦(全粒粉)が身体に良いということ。
脂質はトランス脂肪酸は子宮内膜症を悪化させるためWHOの基準よりもより厳しく全く摂らないつもりで生活する。
たんぱく質は植物性たんぱく質をある程度摂取すべきだが、妊娠しやすい食生活の著者が推奨している量よりも日本人はもともと植物性たんぱく質を多く摂取しているのでこれ以上とる必要はないだろうという事です。
この妊娠しやすい食生活には栄養素という切り口で食事(食生活)と不妊症やその原因の病気(ex子宮内膜症)の際の食事の摂り方についてまだまだ他にも書かれていることがあります。
興味があればご自身で購入して読んでみてください。
ただし、植物性たんぱく質の摂取に関するような、日本人とアメリカ人では異なる食文化があるため、書いてあることを盲目的に信じて実践するのは逆に良くないこともありますのでよく読んで理解してから実践してみてください。
子宮内膜症に関して、食生活も含め、相談があればご連絡いただければと思います。