腫瘍マーカーとは
腫瘍により産生される物質または生体側の反応物質のことで、それを測定することにより、腫瘍の存在診断、ならびに治療効果を判定する補助的な指標です。そのため腫瘍マーカーが陽性または高値であっても必ず腫瘍が存在するわけではありません。
正常な人のがんでない細胞でも腫瘍マーカーをつくるものがあります。そのため、血液中の腫瘍マーカーはゼロではなく、各個人の平常範囲内の値を示します。場合によってはがんでなくてもこの値が上昇することがあるのです。一般的には良性の病気やがんになった時に、数値が高くなってきます。そしてカットオフ値(しきい値)と呼ばれる値よりも高い場合を陽性と呼びます。カットオフ値とは多数の健康な人のデータから決めた数値で、「これを超えたら病気のことが多い」という程度のもので、陽性だから必ずがんがあるというものではありません。
一般に、腫瘍マーカーは進行がんにならなければ血中レベルは増加しません。早期がんの患者さんの血中腫瘍マーカーは正常範囲にあるのが普通であり、病期の進行にしたがって血中の値が増加し、陽性率も高くなります。がん細胞の違いによってマーカーをつくる能力は異なりますが、低分化がんと呼ばれるグループのがんは特徴的なマーカーをつくらないので、進行がんになっても腫瘍マーカーは正常値です。
腫瘍マーカーのほとんどは、がん以外の病気によっても少量はつくられるために、慢性肝炎、慢性気管支炎、結核、慢性膵炎、子宮内膜症などの場合でも血中マーカーが陽性になることがあります。このように、がん以外の原因で腫瘍マーカーが陽性になることを「偽陽性」といいます。CEAなどマーカーによっては20%もの偽陽性があります。このため、腫瘍マーカー検査は画像診断の補助診断に位置づけられています。
腫瘍マーカーの考え方
腫瘍マーカーは一般的には早期がんでは陰性のことが多い。そのため早期発見の手段にはなりにくいのです。
あくまで複数の診断材料の一つと考える絶対的指標ではないのです。
病気の経過観察の指標、治療効果判定の材料として考えるのが一般的です。
腫瘍マーカーで気をつけるべきこと
最近の代替療法を行う医師や自律神経免疫療法の安保先生が発表されていますが、代替医療を始めると腫瘍マーカーが一時的に大きく上昇することがあります。これは死んだガン細胞が血中に大量に輩出されるためだと考えられています。しかしこの値が数ヶ月にわたって上昇し続ける場合はガンの増殖もしくは転移の可能性が考えられます。
マーカー | 正常値 | 数値が示す意味 |
AFP | 10ng/ml以下 | 原発性肝癌に特異性が高いが、肝炎、肝硬変などでも値は上昇します。しかし健康成人の血中には存在しません。 |
CEA | 5ng/ml以下 | 種類の特定できない癌の存在を示唆する指標。がん患者の陽性率は35%偽陽性率14%。経過観察して値が徐々に上昇する場合のみ注意する |
CA19-9 | 37U/ml以下 | 膵臓癌、胆管癌では高率で陽性、胆石で黄疸がある場合でも高値となります |
CA125 | 閉経前女性:40U/ml以下 閉経後女性、男性25U/ml以下 |
主に卵巣癌の指標として用いられる。もし値が500U/ml以上であればほぼ間違いなく卵巣癌とみなされます。また経過観察の指標としても優れている |
PSA | 3.5ng/ml以下 | 前立腺癌の指標 |