紹介で患者さんが来られました。
症状は新型コロナ感染症の後遺症です。
新型コロナ感染症の後遺症の患者さんは時折来られるのですが、患者さん毎に症状が異なっていることが多く、全く同じ症状という方はほとんどおられないですし、コロナになってからかなり時間が経過しても症状が全く改善しないということで、コロナ感染後の後遺症で初めて漢方相談に来られている患者さんは、毎回かなり苦労しながら治療を行っているのです。
そのため、この患者さんはどのような症状か?お伺いすると、味覚障害ということでした。
味覚障害に関しては数名現在も治療中ですが、少しずつ改善してきている一方、スカッと良くなることは余りなく、治療に時間がかかることをお伝えして治療を始めました。
新型コロナ感染症になった患者さんの中で、味覚、嗅覚障害になる患者さんは結構おられるのですが、その多くは新型コロナ感染後1週間くらい経過したあたりから症状が出始めることが多いです。
しかし、そのほとんどの方は発症から1か月経過する頃には自然に改善することが多いのです。
また症状が治っていない場合でも、そのほとんどの方は1~2種類の漢方薬を1か月程度服用してもらうことで良くなる場合が多いのです。
しかし、中には、そこから味覚・嗅覚障害が重症化して、慢性化する方がたまにおられるのです。
この治療が意外に時間がかかるのです。
そして私の薬局に来られている方に限って言えば、傾向としてこの味覚・嗅覚障害が重症化、慢性化するのは若年者が多いのです。
なぜ、そのような傾向が生じるのかは現時点でわかりませんがそのような傾向があるように思われます。
さて、この患者さんも未成年の方で、新型コロナ感染症から3か月経過した頃にご相談に来られたのです。
新型コロナに感染してから3~4日で味覚障害が出てきて、それから病院に通われているそうなのですが、症状が改善しないためご相談に来られたのです。
そこで、まず病院で出されているお薬をチェックしてみると・・・
漢方薬が出ていました。
その漢方薬は通常は生理不順や生理痛に用いる婦人科の漢方薬でした。
漢方理論的に考えても???でした。
でも今回の味覚障害で出されたそうです。
そこで、この漢方薬が合っているか?東洋医学的にチェックしてみると・・・やはり合っていないように思われました。
そして、この新型コロナ発症から3か月経過した段階で味覚の状態をお伺いすると、間違いなく分かるのは辛味だけで、あとは甘味がほんの微妙に分かるか?分からないか?くらいでもあとはわからないということでした。
そこで、次回までに味覚で何が分かって、何が分からないか?をチェックしてきてもらうようお願いしました。
そして、この患者さんに合いそうな漢方薬を探してみることにしました。
この時に合ってるように感じたのはミネラル不足の際に用いるようなものでした。
それを10日間程度服用していただいて再び来てもらうことにしました。
次に来られた際には辛み〇、旨味×、甘味△、苦味×、酸味×、塩味×でした。
そして次にお出しした漢方薬は組織の再生を促すような目的の際にお出しする漢方薬でした。
それを1週間分お出ししました。
そうすると、
辛み〇、旨味×、甘味△、苦味〇、酸味△、塩味△
になりました。
傾向としては良さそうに思われたので、同じものをさらに1週間程度服用していただきました。
そうすると
辛み〇、旨味×、甘味△、苦味〇、酸味〇、塩味〇
となりました。
そして次は今の漢方薬に粘膜の再生を促したい時に用いるようなものを追加でお出ししました。
そうすると・・・
辛み〇、旨味×、甘味〇、苦味△、酸味〇、塩味〇
全体的にそれぞれの味は分かるようになってきているのですが、食べ物を食べてもおいしく感じないとのこと。
恐らく旨味と味のバランス感覚の問題なのだと思います。
そこでまた組織の再生を促すようなものに戻して1週間様子を見ることにしました。
そして次に来られた際に状態をお伺いすると・・・
大分良くなっているとのこと
辛み〇、旨味△~〇、甘味〇、苦味〇、酸味〇、塩味〇
大分食べ物がおいしいと感じるようになったそうです。
現在味で良く分からないのは牛乳の味(おいしさ)とソースやカレーの味が分からないそうです。
牛乳は乳脂肪の味の部分なのかもしれません。
ソースやカレーは純粋な辛みではなくスパイスの味?香りなのかもしれません。
このように治療しながら観察してゆくと人は、
辛味、旨味、甘味、苦味、酸味、塩味などの単純な味だけでなく、香りを含めた様々なものを含めて立体的に、総合的に味として認識し感じているということが体感として分かってきましたし、その複雑さに改めて驚かされました。
現在、漢方治療を開始してから約2か月、やっとめどがついてきた感じです。
少しホッとしています。