インプランテーションディップ画像

ここではインプランテーションディップの問題点とは何か?について漢方薬剤師として、多くの不妊治療に携わってきた実体験をもとにお伝えします。

まず最初にお伝えしたいのは、インプランテーションディップについて、ネット上に出いている情報は、はなはだ正確性に欠ける部分があり、安易な理解は、妊娠とは逆方向に進んでしまう危険があるので、注意していただきたいということです

その具体的な例を私の漢方薬局に来られている患者さんの基礎体温画像を用いて説明していますので、最後まで読んでいただければと思います。

この内容は長年、基礎体温をもとに不妊治療を行っている漢方薬剤師としての経験に基づくものです。

インプランテーションディップとは?一般的に言われている内容

インプランテーションディップとは海外(主にアメリカ)で妊娠兆候の一つと言われているものです。

現象としては着床時(高温期の7日目~10日目)に基礎体温が一時的に下がる現象を言います。

インプランテーション=着床の意味で、ディップ=低下を表す言葉です。

これはアメリカの大手基礎体温サイトが約11万人の基礎体温表のデータもとに分析した結果から統計分析した結果から導き出されたものです。

妊娠や着床の兆候の1つと考えらています。

インプランテーションディップとは次の2の条件をすべて満たしているものを言います。

  • 高温期5日目~12日目の間に1日だけ基礎体温が下がる(2日下がるのはインプランテーションディップではない)
  • 1日だけ下がるときの温度は0.17℃以上下がらないといけない

この現象が多くみられたのは実際には高温期8日目と9日目がほとんどだったようです。

ただこのインプランテーションディップが見られた方の中の約3割は妊娠していなかったそうです。

インプランテーションディップの問題点

インプランテーションディップの最大の問題点は黄体機能不全と混同してしまうというところです。

そしてこの2つの持つ意味合いは真逆なのです。

インプランテーションディップは妊娠の兆候⇒妊娠に近づいている⇒不妊治療の必要はない

黄体機能不全不妊症の原因の一つ⇒妊娠から遠ざかっている⇒すぐに不妊治療をした方が良い、不妊治療している人はステップアップした方がよい

 

インプランテーションディップが仮にあったとして何の意味があるのか?

アメリカの大手基礎体温サイトのFertilityFriendにも書かれていますが、最終的インプランテーションディップは妊娠を確約するものではないのです

結論としては妊娠検査薬をしないとはっきりしませんよと書いてあるのです。

そうすると、この兆候は必要なのでしょうか?

インプランテーションディップを私は確認したことが無い

それは私がちゃんと基礎体温を見ていないからだと思われるかもしれません。

しかしインプランテーションディップは全体の3割に見られる兆候です。

私の漢方薬局では過去に数百名妊娠されています。

そうすると少なくとも100名くらいはこの兆候が無いとおかしいのです。

さすがにそんなに見落とすことはないです。

妊娠する際にいくつかのパターンがあることを私も実際に確認していますが、少なくともインプランテーションディップという現象は私が認識するほど多いものではないということです。

日本の産婦人科学会などの医学界で認識されていないのはそういう理由もあるのではないかと思うのです。

インプランテーションディップと思われている基礎体温の波形はほとんどが黄体機能不全

ネットでインプランテーションディップで検索した際、妊娠に関するコミュニティサイトやインスタグラムのハッシュタグでインプランテーションディップで検索した際に出てくる画像を私がチェックしたところかなりのものが黄体機能不全と思われるものでした。

それ以外に多かったのは高温期が一時的に下がっているけれどもインプランテーションディップの定義に当てはまらないものをインプランテーションディップと勘違いしているケースでした。

具体的にはインプランテーションディップは高温期の5日~12日の間に1日だけ0.17℃以上下がったものと定義されていますが、2日間下がっているものをインプランテーションディップと思っておられる方が数多くおられました。(自分の基礎体温のグラフでインプランテーションディップと表記してあったものにこの間違いが多かった)

また、意外に多かったのが高プロラクチン血症を疑われるような基礎体温のグラフの形(高温期がギザギザになることがある)をインプランテーションディップと間違っておられるケースでした。

純粋なインプンテーションディップかな?と思われるグラフはアフィリエイト系のサイト(関連する商品をクリックすると収入の入ってくるサイト)で信憑性が薄いと感じました。

黄体機能不全について知りたい方は➡黄体機能不全

高プロラクチン血症について知りたい方は➡高プロラクチン血症

黄体機能不全と高プロラクチン血症の基礎体温のグラフパターン

典型的な黄体機能不全と高プロラクチン血症の基礎体温のグラフの形を2パターンのせてみます。

軽度の黄体機能不全パターン①(高温期のほとんどは36.7℃以上で1日だけ下がっている)

黄体機能不全の基礎体温

①よりもやや重度の黄体機能不全パターン②(高温期のうちで36.7℃以上の日が半分以下で大きく2日間連続で下がっている)

血虚の基礎体温

高プロラクチン血症

高プロラクチン血症の基礎体温

【事例】インプランテーションディップと見間違える患者さんの基礎体温画像

これはうちの漢方薬局に来られている不妊症の患者さんの実際の基礎体温表の画像です。

お一人は早発閉経の患者さんです。FSH(卵胞刺激ホルモン)の値は58(MIU/ml)です。

早発閉経は卵巣機能の著しい低下によって閉経(月経が1年以上来ていない状態)しているわけですから、基本的に重度の黄体機能不全なわけです。

ただし、この方は漢方治療で随分改善しましたが卵巣機能は普通の方と比べると弱いです。

もう一方は40代後半(高齢不妊治療)の方です。もともとは突然2か月月経が来ない状態(希発月経)となって来られた方で、卵巣機能は落ちてきているのは明白です。

①早発閉経の患者さんの基礎体温画像1

インプランテーションディップ?の基礎体温

最初の基礎体温だけ見るとインプランテーションディップの基礎体温と見間違える感じです。

 

早発閉経の患者さんの基礎体温2

インプランテーションディップでなく黄体機能不全と考えるべき基礎体温

しかし、基礎体温を2か月~3か月まとめてチェックしてみるとわかってくることがあります。

この基礎体温画像の中の最初の基礎体温を見ると黄体機能不全パターン②とほぼ一緒のことがわかると思います。

つまりこの基礎体温画像の中の最初の基礎体温は黄体機能不全の典型的な形なのです

そして改めてこの2つの基礎体温を並べて考え直してみると、最初の基礎体温は黄体機能不全が強く出ていて、後の基礎体温は黄体機能不全が軽度の状態だという風に考えるのが妥当なのです

 

②40代後半の卵巣機能が低下してきている方の基礎体温画像1

卵巣機能が著しく低下した40代後半の方の無排卵・無月経の基礎体温

 

この方は突然2か月くらい月経が来なくて驚いて私の漢方薬局に相談に来られたのでした。

この状態は黄体機能不全がかなり進んだ形とも考えられますし、無月経に相当するものです。

その後漢方治療で改善し、コンスタントに月経が来るようになりました。

②40代後半の卵巣機能が低下してきている方の基礎体温画像2

インプランテーションディップ?に見えてしまう基礎体温のグラフ

基礎体温が良かったり悪かったりを繰り返す中のたまたま1つがインプランテーションディップの形に見えるグラフです。

しかし次の基礎体温の画像をみてもらうと改善傾向にはありますが、基本的に黄体機能不全ということがわかります。

 

②40代後半の卵巣機能が低下してきている方の基礎体温画像3

インプランテーションディップ?と見えてしまう基礎体温のグラフ

漢方治療で随分改善しましたが時々黄体機能不全の基礎体温のグラフになります。(後半の基礎体温)

このように卵巣機能が回復するにしても良かったり悪かったりを繰り返しながら徐々に卵巣機能は改善してきます。

インプランテーションディップっぽい基礎体温のグラフはこういう過程で見かけることはあります。

 

インプランテーションディップと黄体機能不全は真逆です

インプランテーションディップと黄体機能不全は真逆の状態です。

インプランテーションディップ⇒妊娠の兆候⇒妊娠しそう⇒妊娠しやすい状態と勘違いしやすい

黄体機能不全⇒不妊症の1つ⇒妊娠しにくい⇒不妊治療が必要で治療を急ぐ必要がある

まとめ

インプランテーションディップの問題点とは何か?について私の漢方薬局に来られている患者さんの具体的な基礎体温画像を用いて説明してきました。

ここで言いたいことは、インプランテーションディップと思っていたのに妊娠していなかった場合、インプランテーションディップだと思ってこのままの状態を続けるのが危険であるということです。

インプランテーションディップに見える基礎体温は軽度な黄体機能不全(卵巣機能が低下し始めた徴候)である可能性が高いのです。

もちろん、もうすでに病院に通われていて治療を受けた結果としてインプランテーションディップかどうかをチェックしているのであれば問題ないです。

しかし、もし病院に通っておられない状態でタイミングのみをやっていてこの現象が見られたのに妊娠していない場合に注意が必要なのです。

妊娠率は年齢の若さに比例します。

この兆候をと勘違いして無駄に時間を過ごしてしまう危険性をものすごく感じるのです。

もし、35歳を越えて病院に通われておらずこの現象らしきものが見られてなおかつ妊娠していない。

そして、それが1年以内に数回あったのであればそれは黄体機能不全の前兆の可能性が高いのです。

そういう場合はすぐに不妊専門の病院にかかって治療を始めるか治療をステップアップした方が良いと思います。

そうでなければ不妊を得意としている漢方の専門薬局で相談されることをお勧めします。

繰り返しになりますが、一番大事なのはインプランテーションディップと見違って時間を無駄にしないようにしていただきたいということなのです。

こういったもので一喜一憂するよりも大事なのは自分の身体が良い方向に向かっているかどうかなのです。

もし良い方向に向かっているなら、今月、妊娠出来なくても、来月妊娠できる可能性は高まります。

このような考え方について詳しく知りたい方は、実際に妊娠された患者さんの基礎体温の実例を挙げながら説明していますのでぜひ読んでみてください➡妊娠しやすい基礎体温のグラフの形と妊娠しにくい基礎体温のグラフの形の違いとそれを改善する具体例

広島の漢方薬局ハーブスのTEL082-507-3470